High Throughput-Affinity Selection Mass Spectrometry (HT-ASMS)

HT-ASMSから見えてきた新しい低分子創薬

HT-ASMSは、従来のような生物活性を指標に化合物を探索するのではなく、標的分子との結合活性を指標にヒット化合物を探索する手法になります。従って、標的タンパク質の活性部位以外(アロステリック部位)にも結合する化合物の取得や、標的タンパク質分解における化合物探索に適用できます。また、生化学試験系の構築が困難な標的分子であるRNAやDNAにも適用可能です。HT-ASMSの手法を用いることで、これまでの戦略とは異なる新しい低分子薬の創出が可能になります。Axceleadでは、サイズ排除クロマトグラフィーと逆相クロマトグラフィーを1つに組み合わせたオンラインLC/TOF-MSシステムを構築し、HT-ASMSを実現しました。最初にサイズ排除クロマトグラフィーで化合物と標的分子の複合体を取得します。続いて逆相クロマトグラフィーにより複合体から分離した化合物を質量分析計(TOF-MS)で分析します(Two Dimensional Liquid Chromatography-Affinity Selection Mass Spectrometry, TDLC-ASMS)。本システムを用いることで、膨大な化合物ライブラリーから標的分子に結合する化合物を迅速にスクリーニングすることができます。
時間依存型質量分析計(Time of Flight Mass Spectrometry, TOF-MS)

TDLC-ASMS
1. 標的分子と化合物群をインキュベート
2. サイズ排除クロマトグラフィーによる化合物複合体と非結合化合物の分離(B/F分離)
3. 逆相クロマトグラフィーによる化合物の分離
4. TOF-MSによる標的分子に結合した化合物の同定

サイズ排除クロマトグラフィー

なぜ、ラベルフリースクリーニングが選択されるのか

従来のラベルベースの方法では、アッセイ系で検出するために標的分子もしくはリガンドを蛍光標識等で修飾する必要があります。また標識することで分子の構造や機能が変化し、活性を示さないというリスクもでてきます。しかし、HT-ASMSの手法を用いれば、生化学的手法にもとづくアッセイ系を構築する過程を経ずに、ヒット化合物を同定することが可能になります。さらに、標的分子に結合した化合物をMSで直接測定することから、擬陽性等のアーティファクトが生じるリスクを抑えることができます。

スピード・効率を磨き上げ、研究現場で本当に使えるシステムを開発

どんなに画期的なシステムでもスループットが低ければ創薬研究の現場で活用することはできません。 Axceleadでは、分析に高分解能のTOF-MSを使用し、プールドライブラリーを用いたハイスループットスクリーニングを実施するシステムを構築しました。これによりAxceleadが有する製薬企業由来の高品質な大規模ライブラリー(約32-50万化合物)から、標的分子に結合する化合物を短期間で同定することが可能です。

Axceleadの大規模ライブラリーの特長

HT-ASMSを成功させるもう一つのカギは、高品質な材料を調製できるかにあります。Axceleadでは、これまで培ってきた経験をもとに、様々な材料(タンパク質、核酸等)のデザインと調製を自社で行い、ヒット化合物を創出してきました。高品質な材料は、再現性の高いHT-ASMSを実現し、真のヒット化合物の取得につながります。

HT-ASMSで切り開く新たな創薬標的への挑戦

これまで低分子の創薬標的と考えられていなかったRNA、DNAが高次構造を取っており、低分子化合物の結合によって、遺伝子発現やスプライシング等の機能を調節できることが報告されてきています。しかし、機能不明の核酸に作用する化合物を探索する生化学的アッセイ系の構築は困難です。HT-ASMSの手法を用いれば、標的RNA/DNAに直接作用する化合物を短期間に取得できます。このような手法で得られた化合物は、新しい創薬領域における大きなブレイクスルーにつながります。

事例:RNAを標的とした創薬への適用

FMNリボスイッチに結合する化合物をHT-ASMSの手法を用いて探索

Hit化合物の解離定数 KD を算出することで、Hit化合物の標的に対する親和性を定量化

リガンド化合物と競合試験を実施することで、結合部位の予測や化合物間の親和性比較が可能

競争力の高い化合物を創出したい

競合他社と同じアプロ―チで化合物を探索していては、オリジナリティーの高い化合物を創出するのは困難かもしれません。しかし、結合活性という新たな指標を用いたスクリーニングなら、活性等の機能に基づく従来のスクリーニングと比べ、ユニークな化合物を取得することができます。競合他社と差別化できる化合物は、既知の標的分子であっても革新的な医薬品につながる可能性があります。

事例:結合活性を指標としたキナーゼ A に対する低分子化合物の探索

キナーゼ A に結合する化合物をHT-ASMSの手法を用いて探索

阻害作用を示す化合物だけでなく、結合活性のみを示すサイレントバインダーの取得が可能
  サイレントバインダーは、標的タンパク質分解のリガンドとして活用できる可能性が考えられます

サイレントバインダーもKD値を算出することで、標的分子に対する親和性を定量化することが可能


HT-ASMSで見出されたヒット化合物について、Hit expansion、各種プロファイリングを行うことで、
化合物最適化への展開をサポートします。

進化する低分子創薬で、お客様のパイプライン創出に貢献します。
HT-ASMSを用いたヒット化合物探索は、Axceleadへご相談ください!