2024年4月22日

Data Science & Informatics 浅野研究員の共著論文が「Proceedings of the National Academy of Sciences」に掲載されました

Identification and removal of unexpected proliferative off target cells emerging after iPSC derived pancreatic islet cell implantation

Published Date : April 10, 2024
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論文の概要:
 日吉秀行 主任研究員(武田薬品工業株式会社 R&Dリサーチグローバルアドバンストプラットフォーム)、豊田太郎 講師(CiRA未来生命科学開拓部門、元タケダ-CiRA共同研究プログラム(T-CiRA))らの研究グループは、iPS細胞由来の膵島細胞を多数移植した際に、予期せぬ目的外細胞が出現することを見出し、その培養方法と除去方法を見つけました。
 糖尿病に対する細胞療法として、ヒトiPS細胞やES細胞などのヒト多能性幹細胞(PSCs)から作製した膵島様細胞の移植が期待されています。PSCsから作製された膵島細胞集団には、内分泌細胞以外の細胞(目的外細胞)が混入する可能性があります。過去の研究から、目的外細胞として膵臓の内分泌組織以外の構成要素が移植後に増殖して組織構造を形成することがあると報告されています。しかし、膵臓系譜以外の増殖性の目的外細胞の混入の可能性や、その性質の解明はほとんど研究されていませんでした。
 研究グループは、iPS細胞由来の膵島様細胞を移植して長期間経過後の移植片を多数観察したところ、予期せぬ目的外細胞が出現することがあることに気づきました。この細胞は間葉系幹細胞(MSCs)と平滑筋細胞(SMCs)の特性を持つことから、増殖性MSCおよびSMC様細胞(PMSCs)と呼ぶことにしました。PMSCsは、移植前には検出されず、細胞を多数移植した場合に検出されるため、ごく少数の細胞に由来すると考えられました。そこで、PMSCsを移植せずに検出するために、PMSCsになると推定される細胞集団を増やす培養法を構築しました。この培養系を用いた解析から、PMSCsになると推定される細胞はドセタキセルという化合物で処理することで減少することを見出しました。また、ドセタキセルで処理した細胞を移植すると、細胞を移植してから長期間観察しても、PMSCsが検出されなくなりました。本研究は、移植治療のためのヒトiPS細胞由来膵島様細胞に潜在して、移植長期間過後に顕在化する可能性のある目的外細胞を事前に除去し、安全性を高めることに役立つと期待されます。
 この研究成果は2024年4月10日(米国時間)に米国科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」でオンライン公開されました。
本研究においてAxcelead DDPはシングルセル遺伝子発現解析を実施しました。


関連リンク
京都大学 iPS細胞研究所

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シングルセル遺伝子発現解析

浅野 真也 Data Science & Informatics
修士(農学)。東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程卒業後、ベンチャー企業を経て、2017年にAxcelead Drug Discovery Partners 株式会社に入社。RNA-seqを中心にオミクスデータ解析を担当。